2012年10月22日月曜日

The Sprint-Softbank Enigma


大きな話題となったが、結局は成立しなかった過去の合併案件を思い出してほしい。
2004年の米ケーブルテレビ最大手のコムキャストとメディア・娯楽大手のウォルト・ディズニー。2000年の米メディア企業ニューズ・コープとゼネラル・モーターズ。

 発表された日本のソフトバンクが米携帯電話3位スプリント・ネクステルの株式の7割を15700億円で取得するという計画も同じカテゴリーに属すものと思われていたし、まだそうなる可能性もある。コムキャストとディズニーの合併なら、少なくとも説明がついた。コムキャストは最終的に米メディア大手NBCユニバーサルを買収することで配信事業と番組制作を統合させることに成功した。また、ニューズ・コープの会長兼最高経営責任者(CEO)のルパート・マードック氏はGMの子会社だったヒューズ・エレクトロニクスの衛星テレビ事業に興味があったと言われている。



 しかし、ソフトバンクとスプリントの合併には、外部の人間にもわかるような説得力のある相乗効果が見当たらない。日本の携帯電話市場に革命を起こした孫氏だが、米国でも同じことができるとは限らない。孫氏が偉大な起業家であることに疑いはないが、ソフトバンクの成功は世界的に携帯電話事業を一変させたアップルの「iPhone」を日本で最初に導入したことによるところが大きいからだ。

 スプリントがホワイトナイトを必要としている理由は誰の目にも明らかだ。同社はこれまでにいくつもの墓穴を掘ってきた。結局は失敗に終わった米携帯電話2位のAT&Tと同4位のTモバイルの合併に抗議するロビー活動を積極的に行い、自らがAT&Tか最大手のベライゾン・ワイヤレスに買収される可能性を断ち切ってしまったのもその1つである。

 このことはAT&Tやベライゾンを不当な複占企業と見なす人や、存在しないとされる競争をもたらしてくれる救世主として今や孫氏を応援している人さえをも激昂させるだろう。孫氏は記者会見でスプリントが通信網をアップグレードし、ベライゾンやAT&Tから儲けのシェアを奪うための「軍資金」を注入すると述べた。

 しかし、ベライゾンとAT&Tがたいして良くもないサービスに高額を請求する不当な複占企業だとしたら、スプリントの業績はすでに今以上に良くなっていたはずだ。


 米司法省と連邦通信委員会(FCC)はAT&TTモバイルの合併に反対の姿勢を示す際に、携帯電話市場にはAT&Tやベライゾンほどの規模の4つの全米事業者を支えるだけの経済規模があることを示唆した。こうした公共政策の助けがあってもそうした事業者になれなかったスプリントの無能さを思うと、情報通の投資家は政府が間違っていたと考えるかもしれない。

 多くの損失を出したネクステルとの合併、裏目に出た高速無線通信規格「WiMax(ワイマックス)」や光ファイバーネットワーク「LightSpeed(ライトスピード)」への投資、多くの相反するネットワーク規格の採用など、スプリントの多くの失敗はよく知られている。しかし、こうした失敗がなかったとしても、市場がもう1つの大手携帯事業者を欲したり、必要としたりしているのかは定かではない。

 自らをホワイトレーベルの携帯事業者として売り込み、そのネットワークへのアクセスを他の事業者に与え、独自のブランド名での販売を許可するというのがスプリントの大きな新機軸だった。あるFCCのスタッフは、市場で支配的立場にある事業者なら、こうしたことは絶対しないだろうと述べた。

 しかしそれは誤りである。ベライゾンも複数のケーブルテレビ会社と、同社の無線サービスを独自のブランド名で販売できるという条項がついた契約をすぐに結んだ。競争の激しいインフラ事業では、スプリントに劣らずベライゾンも情報処理量を増やすためにあらゆる方法を模索する必要性に迫られているのだ。

 実はそれ以外にも進んでいることがある。固定ネットワークと携帯ネットワークの合体である。携帯ネットワークの競争はもはや携帯事業者同士だけではなくなっており、孫氏が思い描くような心地よい3社独占が阻害される可能性も高まっている。

 ケーブル会社、自宅所有者、雇用主などが米国中に、第4世代携帯電話(4G)ネットワークを構築するよりも安上がりなWi-Fiホットスポットを生み出し続けている。携帯電話会社が顧客に販売したスマートフォン(高機能携帯電話)に送られるデータの3分の1は、携帯電話会社のネットワークに乗っていない。そうした通信はほかの誰かのWi-Fiネットワークを通じて行われているのだ。

 米国と欧州の顧客を対象としたある調査によると、スマートフォンユーザーの18%はWi-Fiだけに依存し、データプランの料金を支払っていないという。スマートフォンはそれを販売した携帯事業会社のビジネスモデルを破壊しかねない危険な機器である。また別の調査では回答者の半数近くが、携帯電話会社の通話やメール通信の料金がかからないように、オーバーザトップ(OTT)アプリを使っていた。

 携帯電話で携帯ネットワークと固定ネットワークの切り替えが簡単にでき、大半のユーザーが使っていないときでもほぼWi-Fiホットスポット圏内にいるという事実は、ユーザーコネクティビティから得られる利益に占める4Gの割合の長期的見通しが不透明だということを示している。

 これを確実なものにするために、ベライゾン、AT&T、スプリントは、ユーザーがデータを送受信するときに大金をかけて構築したネットワークを使うよう仕向けるため、あらゆるインセンティブを用いるだろう。こうした企業はすでにラップトップ、ネットブック、電子書籍リーダー、家庭用ゲーム機、テレビなどを携帯ネットワークで接続させる「テザリング」を推奨しているが、それにどれだけの料金が請求できるかという問題もある。


 米国企業や投資家のあいだで数兆ドルのキャッシュが眠っているにもかかわらず、スプリントの隠れた価値の探り当てに惹かれたのが孫氏、および(ソフトバンクに資金を融資する)日本の大手銀行だったのはなぜかという疑問も残る。おそらく孫氏には人口動態や財政面で大きな問題に直面している日本以外のどこかで事業を展開したいという思いがあったのだろう。それでもやはり、ソフトバンクとスプリントの合併に関して、ビジネス上当然と言えるような理由は見つからない。



ソフトバンクは今週初め、スプリントの株式70%を総額200億ドル(約15800億円)で買収すると発表したばかりだ。だが、孫社長は、「いかなる可能性や代替策も排除しない」と述べ、米携帯電話4位のTモバイルUSAとの合併で合意している米携帯電話5位のメトロPCSコミュニケーションズに対しTモバイルと競合するような提案を行う可能性を否定しなかった。

 ソフトバンクのスプリント買収の仕組みは異例で、まずソフトバンクはスプリント株に転換できる社債30億ドル相当を購入する。その後、スプリントの新株50億ドルを引き受けるとともに、スプリントの既存の株式の55%を120億ドルで買う。

 スプリントのヘスCEOは、ソフトバンクによる同社買収が異例の仕組みとなったことについて、「保険のようなものだ。買収が完了するまである程度の資金を銀行に預け、何かしたいと思ったならばできるようにしておくためのものだ」と説明した。

 同CEOは、スプリントとTモバイルとの合併の可能性に関しては、長期的にはあり得るとしながらも、今のところはスプリントのネットワークの見直しやソフトバンクによる買収の完了に集中すると述べた。

ただ、携帯電話3位と4位が合併すれば、ベライゾン・ワイヤレスとAT&T2強に対抗する強力なライバルが誕生することになり、消費者にとっては朗報だと指摘した。

 「我々はまずソフトバンクとの合併を実現させなければならない。合併が完了すれば、状況を考え、株主にとって理にかなったものだと判断すれば、その目的のために必要なことをするつもりだ」とヘスCEOは述べた。

国内ソフトバンクの中にも今回のスプリント買収に不安視の声も聞かれるらしい。巨額な負債わ抱えることに今後の安定経営を疑問視している。
1兆円を超える負債を抱えるリスクに対しメリットがあるか?
先に記述しているように、スプリント買収自体も結局は成立しない可能性も多く残されている。



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